小さな声を島の未来へつないでいく。2025年度採択3団体と語る夜|PORT BAR ONLINE

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小さな声を島の未来へつないでいく。2025年度採択3団体と語る夜|PORT BAR ONLINE

みなさまから寄せられた応援が、島の挑戦へ届きはじめています。

島に残る文化を、次の世代へつなぎたい。
子どもたちに、もっと広い未来の選択肢を手渡したい。
地域の中に、人が集い、互いに支え合える場をつくりたい。

そんな声から始まった3つの挑戦が、島嶼基金はじめてのテーマ型助成事業未来をつなぐチャレンジプロジェクトに採択されました。

今回のPORT BARオンラインでは、採択団体の皆さんをお迎えし、それぞれの島で始まっている取り組みについてお話を伺いました。

みなさまから託された応援が、どのような挑戦につながっているのか。
そして、島嶼基金がこれからどのように伴走していくのか。

それぞれのプロジェクトの内容とともに、お伝えします。

港のような場所で、夢や悩みを持ち寄る

PORT BAR の名の通り、飲みものを片手に、あまり肩肘張らずに話せる場をつくりたい。そんな思いから始まったPORT BARも今回で4回目を迎えました。

冒頭、島嶼基金代表の山下から語られたのは、採択団体の皆さんへのお祝いとともに、これからの伴走への思いでした。

お金を出して終わりではなく、共に考え、共に悩み、共に走っていくこと。
島嶼基金が掲げる「共に走る財団」という言葉が、少しずつ形になろうとしています。

今回採択されたのは、3つの団体です。

種子島で、三段登窯による伝統の黒糖づくりを次の100年につなごうとする「種子島黒糖ゆめのたねプロジェクト」。

奄美大島・宇検村で、子どもたちが島内外の仕事に触れ、自分の未来を考える機会をつくる「職場体験遠征事業実行委員会」

そして、加計呂麻島で板付舟を修繕し、子どもたちの遊びや地域交流の場を育てようとする「加計呂麻キッズパパママの会」

それぞれの島で悩みながら、挑戦を続ける人たちの姿がありました。

黒糖を残すことは、コミュニティを残すこと

最初に発表したのは、種子島黒糖ゆめのたねプロジェクトの矢吹淳さん。

種子島の西之表市、沖ヶ浜田地域に残る伝統の黒糖づくり。かつて種子島全体に300軒以上あった製糖場は、今ではわずかに2軒のみとなっています。

その黒糖づくりでは、百年以上続く黒糖の伝統「三段登窯製法」を継承しています。有機農業でサトウキビを育て、刈り取り、絞り、薪の火で炊き、職人たちが阿吽の呼吸で黒糖を仕上げていく。

一日の作業には、16人ほどの人手が必要になるといいます。けれど、その担い手の多くは60代、70代。「あと5年もすると、先輩たちが働けなくなるのではないか」という危機感も語られました。

矢吹さん自身は、福島県出身。東日本大震災を機に家族で西へ向かい、種子島にたどり着きました。そこで出会ったのが、この黒糖づくりでした。

いま、プロジェクトには移住者やサーファー、異なる背景を持つ人たちも関わり、少しずつ新しい担い手が加わっています。

「島で生まれた子どもたちが島を出てしまう。けれど、ゆくゆくは戻ってきて、一緒に仕事ができたら。」

矢吹さんの言葉から見えてきた夢は、黒糖を作り続けることだけではありませんでした。

それは、先輩たちの技術を受け継ぐこと。
島の自然を守りながら農を続けること。
子どもたちが、島に誇れる仕事があると知ること。
そして、そこに関わる人たちのコミュニティを残していくこと。

伴走に入ったメンバーからは、現地で見た黒糖づくりについて、「一人が欠けても成り立たない共同作業だった」との声もありました。

商品が生まれるまでのプロセスに、どんな人の手があり、どんな時間が流れているのか。その物語をどう価値として伝えていけるのか。島嶼基金は、黒糖づくりを支える人たちとともに、その問いに向き合っていきます。

島を出ることも、島を知ることにつながる

続いて発表したのは、奄美大島・宇検村の職場体験遠征事業実行委員会です。

宇検村は、奄美大島の南西部にある、山に囲まれた村です。人口は約1,600人。空港や港からも距離があり、奄美大島を訪れたことがある人でも、宇検村まで足を運ぶ機会は多くないかもしれません。

今回の事業では、中学3年生の子どもたちを対象に、神奈川県横浜市での職場体験を行います。

ITやデザインなど、島の中にいるときには出会いにくい仕事に触れること。都市ならではの働き方やコミュニティを知ること。それは、子どもたちにとって大きな刺激になるはずです。

昨年度の実施を通して見えてきたのは、島外での体験の前後にある学びの設計の必要性です。本プロジェクトでは、「都会はすごかったね」で終わらせないことを大切にしています。

外の仕事を見るだけでなく、島の中にある仕事や、島になくてはならない仕事にも目を向けること。医療、移動販売、職人、地域を支えるさまざまな仕事を知り、島外で見たものと比較しながら、自分の未来を考えること。

島の暮らしに欠かせない職業を担う人々との対談を通して、島ではたらく大人との接点づくり、いつか帰って来たいと思う関係性づくりに取り組みます。

宇検村の取り組みは、進学や就職で、一度は島を出る子どもたちへ向けて贈る、未来の選択肢を増やすための時間になりそうです。

伴走メンバーからは、「島では誰のために、何のために、仕事をしているかダイレクトに感じられる。それを子どもたちに伝えられたら」という声もありました。島嶼基金は、子どもたちが島内外の仕事を知り、自分なりの未来を描けるよう、体験の前後にある学びも含めて、実行委員会とともに考えていきます。

舟を直すことは、子どもたちの記憶をつくること

最後に発表したのは、加計呂麻キッズパパママの会です。

加計呂麻島は、奄美大島のさらに先にある、いわば離島の離島。習い事や部活動、子どもたちの交流にも、船での移動が関わってきます。

校区を越えて子どもたちが交流する機会は限られ、子育てをする親同士がつながれる場も、決して多くはありません。そうした中、加計呂麻キッズパパママの会は、子どもたちが一緒に遊べる場や、親同士が顔を合わせ、支え合える機会をつくってきました。

今回のプロジェクトの中心にあるのは、板付舟の修繕です。

きっかけの一つは、夏祭りの舟漕ぎレースでした。伊子茂校区では、練習に使える舟がなく、子どもたちがレースに関われない状況がありました。

そこで、木造の板付舟を修繕する過程そのものを、子どもたちが集まって遊び、大人たちがつながる機会にできないかと考えました。舟を直すだけでなく、島に受け継がれてきた技術や文化を学びながら、世代や校区を越えた交流の場をつくっていこうという取り組みです。

舟を直すことは、単に古い道具を修繕することではありません。

子どもたちが舟に触れること。
大人たちが作業を通して集まること。
校区を越えて声をかけ合うこと。
島に残る技術や道具のことを知ること。

そこには、遊びと学び、文化と子育て、地域交流が重なっていました

伴走メンバーからは、「板付舟をつくる大工さんが少なくなっている中で、加計呂麻だけでなく奄美全体にとってもかけがえのない取り組みではないか」という声もありました。

舟を直すことは、地域の記憶を直すこと。そして、子どもたちが大きくなったときに思い出せる、島での時間をつくることでもあります。

過疎により失われていくコトが増えている状況だからこそ、先人が培ってきた営みや歴史に目を向け、記憶と風景を紡いでいく挑戦に、島嶼基金は伴走していきます。

採択して終わりではなく、ここから共に走る

3つの発表を聞いていると、助成事業の対象はそれぞれ違っていても、共通する問いがあることに気づきます。

続いてきた伝統をどう残すのか。
子どもたちに、どんな未来の選択肢を手渡せるのか。
地域の中に、関われる余白をどうつくるのか。

そして、その挑戦を一人や一団体だけに背負わせず、どう支え合えるのか。

種子島の黒糖づくりも、宇検村の職場体験も、加計呂麻島の板付舟も、決して大きな制度の中だけでは拾いきれない、小さな声から始まっています。

ひとつの伝統を守ることが、島の誇りを次の世代へつなぐ。
ひとつの仕事との出会いが、子どもたちの未来の見方を変える。
ひとつの舟を直すことが、島に暮らす人々にとっての居場所をつくる。

今回のPORT BARオンラインは、採択団体の紹介であると同時に、島嶼基金にとっても「共に走る」とは何かを改めて考える時間となりました。

お金を届けること。人をつなぐこと。物語を伝えること。
悩みを共有し、次の一歩を一緒に考えること。

島嶼基金では、共に走る財団としてのあり方をこれからも模索していきます。

そして、3つの採択団体の皆さんをはじめ、それぞれの島で始まっている挑戦の歩みに寄り添いながら、必要なつながりを育てていきます。

みなさまから託された応援が、島でどのような変化につながっていくのか。これからも、3団体の活動の経過と、そこから生まれる新たな動きをお伝えしていきます。

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