あったらいいな、からはじまるISLAND GOOD|オンライン座談会レポート
「島に、こんな場所があったらいいのに」
「自分にも、この島でできることがあるかも」
島で暮らす日々のなかで、ふと思い浮かぶアイデアの種。けれど、仕事や子育てに追われたり、何から始めたらいいのかわからなかったり。一歩を踏み出すまでには、迷いや不安もあるものです。
島嶼基金では、そんな想いを応援する伴走型プログラム「ISLAND GOOD」の参加者を募集しています。自分の関心や経験、得意なことを出発点に、暮らしのなかで無理なく始められる小さな取り組みを、一緒に考えていきます。
今回は、開講に先立ち開催したオンライン座談会の様子をお届けします。ゲストは、沖永良部島・種子島・硫黄島で活動する3人。今の活動につながる最初の一歩と、そのときの気持ちを伺いました。

目次
自分と子どもが、楽しく過ごせる場所がほしい
東京で育ち、南の島への憧れから沖永良部島へ移住した新納佳恵さん。島で結婚・出産を経験しましたが、初めての子育ては、不安や戸惑いの連続でした。出産後、地元へ帰省して家族や友人と過ごすなかで、ふと気づいたことがありました。

その後、島へ戻ってからは、地域の活動に参加したり、子育て中の友人と趣味を楽しんだり。洞窟ガイドの経験も生かし、自分の子どもや近所の子どもたちと自然のなかで遊び、ものづくりや料理を楽しむようになりました。

自然豊かな島での子育てを楽しむ佳恵さんでしたが、一方で、雨の日や日差しの強い日の過ごし方に頭を悩ませることや、フードコートのような場所があったらいいのに…と思うことも。また、子育ての環境が理由で島を離れた人も一定数おり、寂しさを感じたこともありました。
佳恵さん自身にも、子育てで不安や戸惑いを感じた経験がありました。「こんなものが欲しい」という想いは、少しずつ「ないなら、つくればいいのでは?」という想いに変わっていきました。

そして、子育て中の人が過ごせる場所をつくりたいと、2020年には、行政や地域の人に相談を始めました。
島にないなら、つくろう!からのスタート

そんな中で出会ったのは、かつて病院として使われていた施設でした。持ち主に想いを伝えると、使わせてもらえることになりました。
友人たちとできる範囲から始めたリノベーション作業。見通しの甘さもあり、思い描いた通りに進むことばかりではありませんでしたが、SNSでも発信を続けるうちに、作業を手伝ってくれる人や応援してくれる人が増えていきました。

地域の声を聞き、自分たちだけでは気づけなかった意見に出会うことも。島の子育て環境の課題だけでなく、島全体のこれからを見つめるきっかけにもなりました。

現在も試行錯誤を重ねつつ、クラウドファンディングや助成金を活用しながら活動を続けています。少しずつ「地域の居場所」として認識され、その必要性も評価されるようになりました。

活動を始めて5年目。増えていく仲間や子どもの成長、たくさんの人との出会いが、現在の活動につながっています。地域食堂や食材の提供、寄付・寄贈、活動への協力など、さまざまな形で幅広い世代が関わる居場所になってきています。

最初から、いまの姿を思い描いていたわけではありません。ですが、小さな一歩を踏み出した先に、動いてみたからこそ出会えた人、見えてきたもの、現在の活動があります。はじめたからこそ、気づけるものが多くあったと、当時を振り返る佳恵さん。
これからも「子どもを中心に地域がつながりつづける居場所」を目指し、SMAPPYの活動は続いていきます。
得意なことが誰かの「ほしかった」につながる
種子島でスイミングスクールと、多世代の交流拠点「ぐるんとビレッジ、」を運営する小脇愛子さん。移住して10年目、人とのつながりをつくる現在の活動の原点には、自身の子育ての経験がありました。

子どもも、お母さんも、元気になれる場所がほしい。そして、自分自身にも居場所がほしい。ないものをつくろう。そう考えた愛子さん。
まずは自分にできることから、という思いで、2022年に町のプールを間借りして、「スイミングスクールぐるんと。」を始めました。
海に囲まれた種子島ですが、子どもたちが意外と海に行かない、泳げないということや、わざわざ鹿児島市の短期スイミングスクールに通っていた、という保護者の声もあり、自分にできることと、地域で求められていることがつながりました。

スイミングスクールはだんだん充実し、大きくなる一方、活動を続けるなかで出会ったのは、水泳以外のつながりを求める子どもたちでした。
教室ではない、もうひとつの居場所を
大きな集団に入りづらかったり、学校以外の場所で過ごしたかったり…選択肢が少ない島のなかで、教室以外にもうひとつ、安心していられる場所をつくれないだろうか。その想いから、2025年に自宅の横にある空いていた農業倉庫の改修が始まりました。

多世代の居場所をつくろう。島内外のつながりや、助成金を活用しながら、1年間かけてDIYで「泊まれる遊び場」をつくりあげ、今年7月に「ぐるんとビレッジ、」をオープンしました。一人ひとりが絵を描いた廃材を組み合わせた壁や、通ってくれた子どもと仕上げた看板には、関わった人の手や想いが残っています。
「ぐるんとビレッジ、」が目指すのは、ありのままの自分でいられる場所。得意なことを生かし、苦手なことは誰かに相談できる。そんな関係が育つ場所です。

島は何もなくて不便なところという捉え方もありますが、あるものに目を向ければ、足元には宝物がいっぱい!真っ暗だからこそ楽しめる夜空や、命の循環が近くにある豊かな自然。子どもたちがいずれ島を離れても思い出す場所に。そして、この島だからこそ楽しめることを、めいっぱい楽しめる場所に。そんな想いで育てています。
これから一歩を踏み出す人へ、愛子さんはこう話しました。

トライアンドエラーを重ね、自分も楽しみながら挑戦する姿こそ、子どもたちにも見てほしい。そして、子どもたちが将来島を旅立ったあとも、帰ってきたいと思ったときに帰ってこられる居場所をつくりたい。「自分たちが育った島は、こんなにいいところだよ!」と誇れる島にしたい。そんな想いを胸に、これからも愛子さんの挑戦は続いていきます。
この島でどんなふうに暮らしていきたい?
結婚を機に2019年、人口120人の硫黄島へ移住した大岩根由加里さん。現在、hikari works合同会社として、夫婦で硫黄島の自然ガイドや取材撮影などのコーディネート、民宿経営をはじめ、空き家改修、特産品開発やレンタカー・レンタサイクルなど、幅広い事業に取り組んでいます。

現在の事業を見ると順風満帆に見えますが、移住した当初は想定外の出来事が重なり、ネガティブな時期があったと由加里さんは当時を振り返ります。

その後、観光自粛により自然ガイド業で生計を立てることが難しくなったため、島外での仕事も必要となり、鹿児島市と島を行き来する暮らしがはじまりました。
また、その頃に妊娠がわかりました。硫黄島には産婦人科がなく、妊婦健診のために鹿児島市へ通う必要があり、月の半分は島を離れる暮らしが続きました。そうした日々のなかで、次第に、島にいないことへの後ろめたさを感じるようになったといいます。

想定外の年子出産を経て、身内がいない環境での子育て。島の人たちは優しい。けれど、どこまで頼っていいんだろう…と夫婦で抱え込むことも増えてきました。
島にいても、居場所がない。そんな感覚を持って暮らす日々が続きました。
そんななか、改めて夫婦で話すようになったのが、「好きでこの島にやってきたのに、本当にこの暮らしでいいんだろうか」ということでした。
改めて、自分たちがどう暮らしたいのかを考えた二人。島に地に足をつけて生きていこうと、夫婦で決意し、創業に至りました。そうすると、少しずつ島での仕事の話が舞い込むようになりました。

「民宿をやってくれないか」と声をかけてもらい引き継いだり、空き家を譲り受けることになったりし、現在の事業につながっていきました。

焚き火の煙を見て、子どもたちが集まってくる
今、由加里さんが楽しみながら進めているのは、海沿いの空き家「ホワイトハウス」の改装。ふらっと立ち寄って話したり、一人でくつろいだりできる場所を思い描いています。

入り口で焚き火をしていると、煙を見つけた子どもたちが「何してるんですか?」と集まってきます。家族でパンケーキを焼いていたら、いつの間にかみんなで焼いて食べる時間になっていたこともありました。
また、資源が限られる島で、捨てるにはもったいないけれど、誰かにあげるには…というようなものを循環させる「物々交換」も実験的に行っています。
大人にとっても、子どもにとってもくつろげる場所へ。おいしいコーヒーを飲んだり、釣ってきた魚を焼いたり、一緒に焚き火を囲んだり…そんな楽しみを、一緒に分かち合える場所が少しずつ育っています。

あなたの「やってみたい」も、ここから
3人の活動の始まりにあったのは、「自分や子どもと楽しく過ごせる場所がほしい」「好きな島で、心地よく暮らしたい」という身近な想いでした。
相談してみたら、場所が見つかった。得意なことを生かしたら、喜んでくれる人がいた。手を動かし始めたら、一緒に考える仲間が増えた。
今ある活動は、そんな小さなことの積み重ねから生まれています。
ISLAND GOODでは、自分の経験や関心を振り返り、講座やワークショップ、個別相談を通じて、小さな実践に向けた準備を一緒に進めます。仕事や家庭とのバランスを大切にしながら、ほかの島の仲間ともつながれるプログラムです。
まだ、はっきりした企画になっていなくても大丈夫です。「こんなことができたらいいな」という想いから、一緒に考えてみませんか。
自分の暮らしが少し楽しくなることが、目の前の誰かのうれしさにもつながっていく。あなたの小さな一歩を、お待ちしています。
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